さよなら、一番好きな人

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「ああもう」 小椋さんが苛々とカクテルを掻き混ぜた。 「ウダウダ飲んでるぐらいなら、さっさと電話すればいいじゃん」 「しない」 涙でも堪えているのか、中野君が両手で顔をゴシゴシとこすった。 「小椋みたいなエゴの塊には完璧な愛なんて一生分かんねぇよ」 そこで中野君はお酒を一気に流し込んで突っ伏した。 「本当に好きならなぁ、相手が望むようにさせてやりたいって思うもんなんだよ…」 慰めてあげたくてもさっぱり事情が分からず、この会話をこのまま聞いていていいものか部外者の私はどうにも居心地が悪かった。 おまけに小椋さんが篠田にボディータッチするのも神経に障る。 篠田は始終その腕を外していたけれど。 「そんなの完璧な愛じゃなくて、ただのヘタレじゃない? ねえ、篠田君」 「いや…。俺は分かるけど」 篠田の意外な返事に思わず顔を上げた。
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