さよなら、一番好きな人

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数日後の夜。 エステの予約を入れてしまったとかで小椋さんが顔だけは申し訳なさげに退社した後、私は一人で下半期のデータ整理をしていた。 最近ずっと多忙な篠田は当然ながらまだ仕事中で、先ほどから羽鳥課長と深沢さんを伴ってミーティングルームに籠もったきりだ。 「ああ……目が痛い」 人もまばらなオフィスで一人ため息をつく。 細かい数字でくたびれた目をマッサージしていると、聞き慣れた声がした。 「お疲れ」 「あら…、お疲れさま」 隣の椅子に腰掛けたのは怜だった。 「下半期の数字あがってきた?」 「今打ってるところよ。 あと少しなんだけどね」 「じゃあ、さぼりがてら待たせて貰おうかな」 そう言って怜は私の机にコーヒーを置くと、自分の分も振って見せた。 「ありがとう。…っていうか最初から油売りに来たんじゃないの? どうせ深沢さんが心配で見に来たんでしょ」 「いやいや、数字が早く欲しかっただけだよ」 「聞き苦しいったら」 二人で笑った後、コーヒーを開ける私に怜が小さく尋ねた。 「聞いたよ。羽鳥課長とのこと」 黙って画面を見つめたままコーヒーを口に含んだ。
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