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ほんの小さなすれ違いから私達は後戻りのない別れ道に立ち、歩き始めようとしている。
きっとこの先、振り返って目を凝らしても、遠く見えなくなっていくのだろう。
懐かしさに圧倒されて、二人ともコーヒーを飲みながらしばらく黙っていた。
ふと思うのは篠田のこと。
今も胸を抉る彼との一瞬の交錯も、同じように消えていくのだろうか。
「でもまだ決めてないから、残念ながらお別れじゃないわよ」
わざと明るく、
しんみりとした空気を破る。
「結果的に良かったじゃない?
怜は一生をかけて守りたいと思える人に出会えたんだから」
「そうだね」
「はっきり言ってくれるわね」
ひとしきり笑ってから画面を見つめたまま口を開いた。
「ねぇ、怜。最後に教えて」
自分で言っておきながら呼び方をうっかりしてしまったけれど、怜も突っ込んでこなかった。
「あの頃…私を好きだった?」
一番好きな人に、
同じように思われる恋の奇跡。
私は一度でも手にしていたのだろうか?
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