さよなら、一番好きな人

7/33

2457人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
ほんの小さなすれ違いから私達は後戻りのない別れ道に立ち、歩き始めようとしている。 きっとこの先、振り返って目を凝らしても、遠く見えなくなっていくのだろう。 懐かしさに圧倒されて、二人ともコーヒーを飲みながらしばらく黙っていた。 ふと思うのは篠田のこと。 今も胸を抉る彼との一瞬の交錯も、同じように消えていくのだろうか。 「でもまだ決めてないから、残念ながらお別れじゃないわよ」 わざと明るく、 しんみりとした空気を破る。 「結果的に良かったじゃない? 怜は一生をかけて守りたいと思える人に出会えたんだから」 「そうだね」 「はっきり言ってくれるわね」 ひとしきり笑ってから画面を見つめたまま口を開いた。 「ねぇ、怜。最後に教えて」 自分で言っておきながら呼び方をうっかりしてしまったけれど、怜も突っ込んでこなかった。 「あの頃…私を好きだった?」 一番好きな人に、 同じように思われる恋の奇跡。 私は一度でも手にしていたのだろうか?
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2457人が本棚に入れています
本棚に追加