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「いまさらだけど。
聞けなかったの、当時は怖くて」
あの頃不安で聞けなかったことも、今なら口にできる。
「ちゃんと好きでいてくれた?」
もう戻ってこない私達の十年を、二度と開くことのないアルバムに収めるように。
怜も理解したのだろう。
優しく笑って答えてくれた。
「好きだったよ。
心から大切に思ってた」
「…ありがとう」
画面に顔を向けたままにっこり笑った。
「幸せになってね。
心から願ってるから」
「美紀もね。どんな道を選ぼうと、美紀らしくいて」
“美紀らしく”
なぜかその言葉に涙が滲みかけた時、遠くのドアが開いて米州部の三人が出てきた。
遠目にも分かる深沢さんの疲れきった表情に吹き出したけれど、その後に続いて出てきた篠田の姿にまた胸を掴まれる。
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