第10章

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「あつっ!」 肉じゃがを味見しようとして、ヤケド。 「うわぁ!」 食器を取りに行こうとして、何もないとこでつまずく。 今日の青柳さんは、全然落ち着きがない。 「まったく…ほんと…」 可愛すぎ…なんて、台詞は喉元をすっーとは出てこない。 頭をぽんぽんと優しく撫でて、顔を覗き込むと、 「ご、ごめんなさい…」 と、頬を染めて言うその姿が何とも言えない気持ちにさせる。 一緒に囲む夕飯は、ほっとさせる青柳さんの笑顔と、温かい料理に、余計、俺を夢心地にさせる。 母親の調子が良かった頃の昔を思い出す。 こんな風に誰かと笑って過ごせる食卓が、ましてや他人の誰かと過ごせるようになるなんて、想像すらしていなかった。
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