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半ば、諦めていた、というか、この感覚をすっかり忘れていたのに。
青柳さんと過ごしたことで、この温かく、柔らかい、癒しの空間を思い出した。
悲しみに染められていた母親との思い出が、それだけじゃなかったと、次々と思い出されて、俺自身、とても驚いていた。
「じょうくん。」
と呼ぶ声は、もっと柔らかで、優しかったことすら、忘れていた。
闘病生活が本格的に始まる前は、きっと、俺は思ってた以上に、愛されていたはずただ。
その証拠に、母親が大切にしていた宝箱には、幼少の頃の俺が書いた手紙や、似顔絵が綺麗に大切に、保管されていた。
その有り難みや、充足感が、ここ最近、どんどんと強くなる。
精神科への入院や、その特別病棟への見舞いは、まだ10代の俺には実際、認めたくない現実だった。
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