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「まだ?」
「ひゃっ!」
気付けば、後ろにたつ武石くんの気配に肩があがる。
残業中で人は少ないとはいえ、長身の武石くんがうちの課にくれば、目立つのは当たり前で…。
といっても、それがわりと頻繁にあることなので、もう今更話題にすらならなくなってきた。
付き合うようになってから、武石くんの愛情表現はどんどんと大胆になる一方で、二人の関係は、社内でも知らない人はいないと思う。
「あと少し…」
隣の椅子に、跨るように座ると、背もたれに腕をのせて、私の仕事ぶりをただ眺めている。
余っている足が時折私にあたっているのに、本人はその接触さえ楽しんでいるかのよう。
「まだ怒ってんの?」
「……べつに。怒ってないよ」
「…ふぅーん。」
椅子をギシギシ言いながら、私の一挙手一投足を観察しているのがわかる。
自然と前に突き出た唇に、私がまだモヤモヤしていることに気づいているだろう。
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