第10章

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***** 「まだ?」 「ひゃっ!」 気付けば、後ろにたつ武石くんの気配に肩があがる。 残業中で人は少ないとはいえ、長身の武石くんがうちの課にくれば、目立つのは当たり前で…。 といっても、それがわりと頻繁にあることなので、もう今更話題にすらならなくなってきた。 付き合うようになってから、武石くんの愛情表現はどんどんと大胆になる一方で、二人の関係は、社内でも知らない人はいないと思う。 「あと少し…」 隣の椅子に、跨るように座ると、背もたれに腕をのせて、私の仕事ぶりをただ眺めている。 余っている足が時折私にあたっているのに、本人はその接触さえ楽しんでいるかのよう。 「まだ怒ってんの?」 「……べつに。怒ってないよ」 「…ふぅーん。」 椅子をギシギシ言いながら、私の一挙手一投足を観察しているのがわかる。 自然と前に突き出た唇に、私がまだモヤモヤしていることに気づいているだろう。
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