第10章

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帰り道、いつものごとく、スーパーまでの道。 「今日は鍋にしよっか?」 「うん、腹へったー」 「武石くん、何鍋がいい?」 「………」 一瞬、繋がれた手を引き寄せられて、武石くんの足が止まった。 「そろそろ『武石くん』、やめない?」 「え……?あ、呼び名?」 「そ…」 「んーと……じょうくん、ジョーくん、丈?」 指折り数える私を見て、ふっと顔を緩めると、 「何でもいいよ」 と、優しい声が聞こえた。 「武石くんのお母さんは何て呼んでた?」 ちなみに私は千代です…とこっちのアピールも忘れない。 「あー、確か……じょうくん?だったかな…」 「じゃあ、お母さんと同じにしようっと。」 「それって…なんか、俺、マザコンみたいじゃん…」 「あははっ。人なんてみんな、マザコンだよー!私もお母さん大好きだし。マザコンを悪い意味でつかいすぎ。母って存在は、人間の根幹にすごい影響を与えるんだよ、絶対。偉大なるじょうくんのお母さんと同じように呼びたいなぁ、私も!って思ったの。」
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