第10章

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お願いごとをするように、背の高いじょうくんを見上げると、ポリポリと頭をかきながら、ちょっと照れた顔を見せた。 「お母さんの手って魔法だと思わない?」 「どういうこと?」 眉間にシワがよるも、表情はとても柔らかい。 「お腹いたいときなでてもらうと、不思議と良くなるでしょ?お母さんの手で自分の手を握ってもらうと、元気がでるし、いっつも不思議だなぁって!」 「うん……それが千代の母親像なんだ…?」 「千…」 どさくさに紛れてさら~っと聞き流しちゃったけど、じょうくんのさりげない『千代』に、心臓がきゅーっと音をたてる。 「私の中でじょうくんの存在も魔法かも…」 「それって…どういう意味?」 「私のことを簡単に幸せにできる魔法使いってこと。」 ギュッと握る手に力が入れられて、また、私は幸せの魔法にかけられる。
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