出会いは桜の季節

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「ご、ごめんなさい。すみません、すみません」 「うちの子が申し訳ありませんでした。すみませんっ」 猛ダッシュで追いかけて来たのだろう。 顔を上げると、男の子の両親らしき2人が、肩で大きく息をしながら深々と頭を下げていた。 (・・・あれ・・・?) 先程のやんちゃ坊主からは想像もつかないような、いかにも大人しそうな夫婦。 化粧気も感じられない、ひどく疲れた表情の眼鏡のお母さんと。 隣に立つのはこれまた眼鏡の、ゴボウのように細くて、ひょろりと背の高いお父さん。 本来なら苦情のひとつも言ってやりたい場面ではあるが、何しろ今日は入園式だ。 後々にしこりを残すようなことはしたくない。 『大丈夫です』と、心にもない大人の対応をしようとした時だった。
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