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「いいんだ。司が無事ならそれでいい」
一瞬目を瞠って、そっと近づいてきた唇がゆるくひらいて忍を誘い込む。汗をかく行為は慎むように言われているせいか、口づけだけで確かめ合った。
「忍さんは俺の背負ってるこいつと同じだ。……愛してる」
忍は言葉につまって、寝転んだ司に腕を伸ばした。ふたりを隔てていた枕を取られると、照れくさそうに頭を抱え込んで胸に押しつけられる。
「俺も。俺もだ、司……愛してる」
司にとって刺青は、二度と取り替えることのできない伴侶だ。忍も司の全身に、心を刺し込んでいくように、一突き、一突きに想いをこめた。
刺青は、死してなお骨に残り、永遠に同化して色を残したまま灰になる。
忍は、溶け出して抜けない色になれればいいと、司を強く抱きしめた。
END
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