喉に刺さる骨

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 離れたくない。離さない。忍は首の下に周る司の腕を愛おしく撫でながら、ぎゅっと手を握った。 「忍さんに惚れて、俺のものにしたかった。同じように、俺のもんにならなきゃいいと思ったこともある。俺の脛になるってことは、真っ先に命を狙われるからな」  胸の真ん中に針が刺さった。痛いと拳をつくると、そこに手を置いて身じろいだ。思わず司の胸にすがりついて、腕の下に頭を埋める。 「そんなの、俺がなりたくて。司のそばにいたかったのは俺のほうだろう、そんなの言うな」  司がふっと笑った気がして、忍は顔を上げた。 「嬉しいな。そんな言葉が聞ける日がくるとはな…俺は生まれたときから極道だ。変わりようがねえ…それでも、ずっとそばにいてくれるか?」  まるでプロポーズされているような気がした。忍は天を駆ける応龍に手を伸ばし、司を抱きしめると、身をせりあげて答えを与えるように口づけた。  そしてそのまま、愛の営みへなだれ込むはずが、突拍子もない言葉で遮られる。 「忍さん、悪りい。今から波布と約束があるんだ」  忍は司を見上げる格好のままきょとんと瞼をしばたたかせた。 「お前は、……空気をよめ!」  笑いながら髪をくしゃくしゃと触られたあと、司は裸のままベッドを下りていく。
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