プロローグ

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   司とは忍が彫師を目指してすぐに出逢い、何かとなつかれた。忍が二十歳、司がまだ高校生だった頃の話だ。  ちょうど司の背中の筋彫りが終わる頃、舎弟が問題を起こしたことで、中途半端なまま、勤めに出してしまう形になってしまったのが心残りだった。 「天下の若頭の背中を放ったままじゃいけないね」  忍は端座すると、アルコールで消毒したあと、刺し棒から針を抜き、針入れに捨てた。  佐倉が着替えを終え、玄関の上がり端まで歩くのが見えて、横から靴べらを差し出す。極道とはいえ、彫龍(ほりたつ)の大事な客人のひとりだ。  軽く頭を下げる佐倉を送りに、暖簾をくぐってエレベーターの前まで歩く。 「司に待ってるからと伝えてくれるか」 「承知しやした」  忍は深々と頭をたれると、また次の客人のために彫龍へと急いで戻った。
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