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メインストリートをぶらぶらしている時に、カタコトの日本語でしつこく寄ってくる栗の押し売りにも、「クリ、イラナイ」とナゼか俺もカタコトになってしまったけれど、きっぱりと断り、クールな俺をアピール。
「井戸って、言う時は言うんだね~」
理央ちゃんは「井戸、やるね」とイタズラっぽい笑みを浮かべた。これは相当な好感度アップじゃないのか?
よっしゃー!と心の中の俺が喜ぶ。都会に揉まれて大人になったな、俺。過去のトラウマを見事に克服できた。
「ねぇ、井戸。理央、占いやってみたいな」
ド派手な原色の中華料理店や土産物屋がひしめき合う繁華街の裏路地に、「手相占い、千円」と地味な看板が出ていた。
扉が開きっぱなしになっている店内を覗くと、部屋の中がパーティションで区切られていた。占いブースが4つ程あり、占い師らしき人が、通り側を向いてテーブル席に座っているのが見えた。
占いの館ってこんな安っぽい感じだっけ?
「凄くよく当たる!」引き戸に貼られた手描きのポスターがますます怪しい。
「ここで占うの?」
「何で?占って貰ってる人いるから大丈夫だよ。いこっ!」
確かに4人の占い師のうち、3人は接客中だった。理央ちゃんの中で、「ここで手相占いをする」は絶対項目になったらしく、躊躇する俺に構わず「お願いしまーす」と店の中に入って行った。
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