いいひと。

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教室の机を向かい合わせにしたような安っぽいテーブルの上には、ベロア生地っぽい紺色のテーブルクロスが掛かっている。そのテーブルを挟んで、俺たちは占い師と対峙した。 「お掛け下さい」と促された席は2つ並んだパイプ椅子だった。 ブースを区切るパーティションには、「占い師・マドモアゼル辰子(たつこ)」と手描きの紙が貼ってある。 マドモアゼル辰子……辰の子……めちゃくちゃ強そうな名前だ。辰子は、俺のおかん位の年齢のオバサンで、マツコ・デラックスが着てるみたいなテラテラした素材の黒いワンピースを着ていた。 髪型は昔、おかんもやっていたソバージュとかいうチリチリパーマ頭で、目の周りを囲むようにくっきりとラインをかいているせいか、眼力が半端なかった。 真っ赤な口紅にそれに合わせたようなマニキュアをしていた。 凄い占い師のようにも見えるし、とんでもないエセ占い師にも見える。 「占うのは、お嬢さん?」 辰子の問いに理央ちゃんは「はい」と元気に答える。 女の子は占いが好きって言うけれど、この辰子の風貌をどう思ってるんだろう?理央ちゃんってピュアそうだから、何でも信じちゃうのかな? 「では、始めます。右手を見せて頂いてよろしいかしら?」 辰子は鋭い眼力で理央ちゃんに訊ねる。理央ちゃんはおずおずと右手を差し出した。 辰子は早速、理央ちゃんの右手を取り、マジマジと見つめた。
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