いいひと。

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「ありがとう、井戸」 理央ちゃんはにっこりと笑い、先に店を出て行った。辰子に千円を渡し、理央ちゃんの後を追う。 「君」 パイプ椅子を直し、踵を返した所で辰子に声を掛けられた。 「何ですか?」 目を直視出来ないので、開いた鎖骨の辺りに揺れる水晶を見て訊ねた。 「焦る事はないわ。羽根ある者があなたを次のステップに導いてくれるわ」 「え?どういう意味ですか?」 漠然としていて、何を意味するのか全く理解出来ない。訊き返すも、辰子はにたりと一度笑っただけで、「ありがとうございました」と一礼すると、パーティションの奥に引っ込んでしまった。 何なんだ?あの占い師は……腑に落ちないまま、すでにメイン通りの方に歩いていく理央ちゃんの背中を追った。 「ねぇ、そろそろ場所、移動しない?」 理央ちゃんの「好きな人に告白したい願望」を隣で聞いてしまってから、そわそわして落ち着かない俺は、そう提案してみた。 「どこに行くの?」 「みなとみらいに行ってみようよ。歩き疲れたからお茶しよう」
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