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男女のはしゃぐ声にふと我に返る。
あれから、真っ白な頭で街中をふらふらし、気付いたらこの場所に辿りついていた。徐々に記憶が舞い戻ってくる。右斜めの方向に同世代くらいのカップルがいた。
2人して寄り添うようして、柵から海を眺めている。どうやら、世界は2人だけのために回っているらしい。
「トンビに注意!」と書かれた看板が目に入って、あの2人が襲われればいいのに……とゲスなことを考えた。
楽しそうな声が鼻に付く。視線を変えると、オッサンが2、3人で海にむかって釣りをしていた。それはそれで風情はあるが、ワンカップ片手に楽しそうである。あのオッサンにも休日を共に過ごす仲間がいるんだなと思ったら、自分が急に孤独に思えてきた。
潮の香りがする。
海から吹いてくる風が俺をすり抜ける。
対のカモメが海の上を飛び去り、遠く空の向こうでは飛び立ったばかりのジェット機が見えた。
音楽でも聴くかとボトムの尻ポケットから再び携帯を取り出した。
動画サイトを開き、お気に入りに登録しているアーティストを選ぶ。
横浜といったら、やっぱり「ゆず」でしょう。
先日、Syunpeiと行った横浜アリーナのライブで、俺は初めてゆずの生歌を聞いた。
ずっと一線で活躍している人たちだし、オリンピックや朝ドラなんかで彼らの楽曲を聴く機会は多かったので、何となく歌は知ってますって程度だった。こんな風に言ったらファンの人たちに怒られてしまうかもしれないけれど。
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