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屈んだのと同時に背中に衝撃が走り、思わず前のめりに地面に手を付いた。
「なっ!?」
振り向きざまに見上げると、フラミンゴみたいに片膝を曲げて、俺を見下ろす冷たい視線があった。
「翼(つばさ)?何!?俺、何かした?っていうか、着いたら連絡するって言ってたじゃん!」
背中を擦りながら、恨めし気に、今しがた膝蹴りを喰らわせた相手を見る。
「いや、だって、井戸からの写メに潮入り池の橋が映ってたから、すんなり位置特定できて、着くなり見つけちゃったからさ。何か、陰気なオーラが後ろ姿から漂ってたから、喝入れてやろうと思ってな」
「ちなみに潮入りの池ってあそこな」と向かって左側に見える橋の辺りを指差した。満潮時には橋の下を通り抜けて、丘の中腹位まで海水が入り込み、池が出来ることからそう呼ぶらしい。
「今度からGPSをONにしとけよ。で、何だよ、こんな所に呼び出しといて」と翼は悪びれず、階段に腰を下ろした。
「別に、お前が横浜に住んでるって言ってたから、たまたま横浜に来てたから、連絡しただけだよ」
足元に落ちた携帯を拾い、傷がないかチェックをし、イヤホンを付けたまま、再び尻ポケットにしまった。翼の隣に腰を下ろすと、はぁと溜息が出た。
「1人で、たまたまねぇ……タバコ吸っていい?」
翼はそう呟くと、俺の了解も得ずに、着ていたスカジャンのポケットからタバコを取り出した。
マルボロのメンソール、翼がいつも吸っているタバコだ。
「……髪切った?」
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