いいひと。

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どうして、こうなった?といくら考えても解らなかった。 ほんの1時間前までは、人生の中で絶頂だったのに……今では、1人虚しく、海風に当たっている。 風が思ったより強く、今朝1時間かけてセットした髪型は、すでに乱れてボサボサだ。仕方なく、ミリタリーコートのフードを被る。 今日のために買ったモッズコートとパーカーを掛け合わせのような中丈のミリタリーコートは、理央(りお)ちゃんが「カッコイイ」と言っていたモデルのSyunpei(しゅんぺい)が、雑誌で着ていたものだった。 Syunpeiが着ていたのはブラック、俺は色違いのダークグレー。彼のコーディネートを真似して、インナーはVネックのカットソーとボトムはスキニージーンズで合わせてみた。 足元はブラックとベージュ、2トーンカラーのNew Balanceのスニーカーで、Syunpeiスタイルの出来上がりだ。 俺が実はモデルのSyunpeiと高校の同級生で友達だって言って、一緒に撮った写メを見せたら、理央ちゃんどんな顔するのかな? 「すごーい!」なんて満面の笑みで食い付いてくれるだろうか。 邪な考えが浮かんでいやいやと首を振った。大体、何がすごいんだ?別に俺がモデルなワケじゃねぇーし。何、Syunpeiを巻き込んでまで、理央ちゃんと2人で会う口実を探してるんだろう……情けない。 理央ちゃんは都内の私立女子大に通う女の子だ。今年大学生になったばかりで、年齢は俺の1つ下だった。
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