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「──────ッ!?アニス!!ガキをやらせるな!!」
一瞬、かぼさんの背後で鈍く煌めいた金属を視認したローグが、咄嗟に叫んだ。
続けて【それ】が飛来するより早く、連射矢のスキルで前方に素早く矢を拡散させて放つが、【普段使用していないタイプのアバター】が災いした。
「ちいっ」
コンマ数秒の単位の判断の遅れが、ローグ達三人目掛けて放たれた100本以上の矢の雨を防ぎきれず、小さく火花を散らした矢尻の衝突を免れた物達が、容赦なく身体を貫いてくる。
「ろ、ローグさん・・・・」
「ごめんなさい・・・・私達・・・・」
相手のおかしな様子に少なからず油断させられた事もあり、リフィーガは防御行動も取れずまともにこれを食らい、アニスはアルフレッドの盾になるような形で矢を全て受けた。
二人のHPはみるみるうちに減少し、遂には0を指し示してアバターを呆気なく消滅させる。
「この威力・・・・おいおい、ちょっと反則じゃねーのか・・・・」
ローグ自身も手足や肩の十数ヵ所に矢尻が突き刺さり、HPは半分近く削られていた。しかし痛みを伴わない世界ではソレをわざわざ引き抜く必要は無く、消滅したアニスの代わりに、石畳に横たわったアルフレッドの前に移動する。
珍しく額から冷たい汗が頬を伝うのを感じ、ローグはゆっくりと歯軋りしながら顔を上げて正面を見た。
もう感付いてはいたが、ユノとそれを匿うかぼさんの背後からずらりと横並びに姿を現したのは、忌々しい騎士団の紅の鎧姿だったのだ。
「・・・・お揃いかよ。ケーサツ気取りの貴族の犬ども。その鎧じゃ、どうせヴィセルディアン・マルクルスの・・・・」
「君の様な輩には、是非とも【閣下】を付けて貰いたいものだな。シュンツァイ・・・・いや、ローグ君」
そして【当然の登場】として次に現れたのは、統一された鎧姿の騎士達とは異なる、長く垂れた顎髯が印象的な壮年の貴族────ヴィセルディアン・マルクルスその人だった。
「はっ、テメーからわざわざ出て来るとはよー。よっぽど暇なんだな、ゲームマスターって奴は」
強気な言葉とは裏腹に、ごくりと生唾を呑み込んだローグの心中を知ってか知らずか、ヴィセルディアンは「むほん」と、わざとらしく咳払いをしてから、言った。
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