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「それを知っているのならば、私の息子が私にとってどれだけ大切な存在か、理解出来る筈ではないのかね?」
「その大切な息子を、俺達と一緒に射殺そうとするとかよー、イカれてるよなぁお偉いさん」
「言っておくがローグくん、我々にはもう茶番も無駄な挑発も必要無いのだよ。息子を君達のような輩の手元に置かせておくより、【殺して】しまった方が安全なことも、理解出来ているのだろう?」
ユノを始め、かぼさんや紅騎士団の面々にも、二人の会話の内容の全てが理解出来る者は殆どいなかった。
勿論、彼等が出会った時点である程度の【事情】は話されてはいたのだが、それを含めてこれが只のNPCの貴族とプレイヤーの会話では無い事が解る程度で、周囲はただそれに聞き入るしかない。
事情の結び付けに対する情報が不足している中で、しかしヴィセルディアンは尚も続けた。
「ここにはもう、我々を妨害する者は存在しない。残っているのは君と、私の愛する息子だけだ。つまり・・・・終わっているのだよ、君は」
冷たく言い放たれた言葉に、ローグは心臓を刺し貫かれたかのような感覚を覚えた。擬似的な心臓の鼓動が早さを増し、呼吸が乱れる。
これは恐怖なのか、遂にチェックメイトを感じ取り、ローグの精神が敗北を認め平伏そうとしているのか──
「ヒヒ、ヒヒヒヒャハハ!!」
しかしローグは、その状況で笑っていた。妖しく不快な表情で高笑いし、周囲をざわつかせる。
「勝ったつもりかぁ!?俺を此処でぶっ殺して全部終わらせるって、終わるって、本気でそう思ってるわけじゃねーよなぁ!?」
半ば自暴自棄に思われるその様子にも、もはや戦意は無かった。失命に抗おうとする意思よりも、自分を殺すリスクを敢えて伝え、それすらも失敗した暁には、相手の精神に傷を残して退場する事を選んだのだ。
ローグの終焉が、自分自身の終わりではない事が解っているから──
「それに俺を裁くってことは、お前らも道連れってことなんだよ!!お前らが何年も掛けて築いた物を、一瞬にして無くすってことだ!!その損失が幾らになるか、解ってねーわけじゃねーだろ、ああ!?」
しかしヴィセルディアンはあくまでも冷静に、ローグの瞳から鋭い視線を外さなかった。
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