終幕【とある青年(いのち)の物語】

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ユレスティアス地方 【セリノス】 ─半壊した街の南部─ 闘牙狂王との死闘の最中、アルフレッドがローグ一味により連れ去られた事に、生き残った癒し猫のメンバーとリーパートセィムのメンバー、そしてエリオ達から直ぐに動ける者を選抜し、奪還行動に移ろうとした直後であった。 シュンツァイ達に不信感を抱いていたエリオが【足止め】を頼んでいたかぼさんとユノが、エリオ達の元へ駆け付けたのだ。 その後ろにヴィセルディアン・マルクルスと抱きかかえられたアルフレッド、更にぞろぞろと紅騎士団の面々を引き連れて。 「エリオさん!!」 取り敢えず足場の悪くなった場所を避けて、ジレッドやシャルロッテ達と回復アイテムの交換補充を行っていたエリオに、いち早くそれを見付けた小さな身体が飛び込んで来る。 というより、勢い良すぎてちょっとした地面の割れ目に躓いたユノが、そのまま近くの瓦礫にぶつかりそうになった所を、咄嗟に抱き止められたのだ。 エリオはほっと安堵の息を漏らす。ユノはその胸に額をくっつけたまま、小さく声を出した。 「良かった・・・・本当に良かったです・・・・ぐしゅ」 「泣いて・・・・いるのか?すまなかった。君に心配を掛けてしまって」 「いえ・・・・でも、わたし・・・・本当に・・・・エリオさんが、いなくなっちゃったら・・・・どうしようって・・・・」 ぎゅうっと、エリオに抱き付いて離れないユノの、その力に込められたものは、エリオの無事に対する安堵の現れであった。 それと同時に、【本当に大切な存在】が自分の傍に無かった事で覚えた不安と恐怖──果ては喪失感から、必然的に身体がその【ぬくもり】を求め続けていたのかもしれない。 「ユノ」 ほんの少しの時間を共有してから、エリオは優しく少女の名を呼んだ。そして赤茶の長い髪に触れると、そのままゆっくりと頭を撫でる。 伝わってくる心地好い感触と、心があたたかいものに満たされる気持ちに、ユノは自然と顔を上げ、エリオの純真な瞳に吸い寄せられるように視線が合う。
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