終幕【とある青年(いのち)の物語】

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「そして突然ではあるが、このクエストは今を以て終了とさせて貰いたいのだよ、プレイヤーの諸君」 十数秒、静寂が訪れる。 そして──── 「うおおおおおおっしゃ──ッ!!」 「高難度クエスト制覇────ッ!!」 「やっと終わったよー。みんなお疲れ様ー」 「なんだか既視感のある光景だけどねー。取り敢えずエリオくんもユノちゃんもお疲れー」 理由はよく解らないまでも、空に上がった数発の大きな花火と共に頭上に表示された巨大な【クエストをクリアしました】によって、プレイヤー達はようやくの緊張感から解放される事となった。 歓喜し、盛り上がったプレイヤー達は互いに健闘を称え合い、腕を組み、手を繋ぎ、唐突に歌い出す者やハイタッチする者、癒し猫の館の少女達はギルドマスターのシャルロッテに一斉に抱き付き、かぼさんはエリオとユノとジレッドを纏めて硬い鎧の抱擁に巻き込んだ。 長く、とても長く感じられた一日が終わろうとしている。誰も彼もが心身の疲労をものともせずに、【達成感】を味わい尽くすように。 「それで、クエストの報酬の話はどうなるのかしら?まさか、これはそちらの判断で、中断扱いになるわけではないでしょうね?」 ただ唯一、その光景に触発されなかったのは御神楽琴音だ。 小学校の高学年程度の背丈の小さなギルドマスターは、訝しげな顔で頬に片手の指先を添えながら、ヴィセルディアンの前に立っていた。 ぽっこりお腹を少しだけ逸らして、壮年の貴族は答える。 「無論、君達はクエストの目的を見事達成させたのだ。兼ねてよりの約束通り、過去イベントの報酬装備を此処にいるプレイヤーの人数分用意させて貰おう。配布は後日になるだろうが、心待ちにしてくれたまえ」 「そう。それなら良いの。私達はその為に戦っていたのだもの」 「ふむふむ、しかし少々、可愛らしいお嬢さんの言葉に、怒りの感情が籠められているのが気になるが」 「そんなこと当然でしょう?私の・・・・ギルドの為に死んだコ達が大勢いるのだから。私はギルドマスターとして、あのこ達が納得出来る結果を持ち帰らなければならないの。貴方がそれを拒んでいたら、私は貴方達全員を葬ってでも報酬を得ようとしていたでしょうね」
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