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男はまだ若い。
二十歳ぐらいに見えるが、歳には不相応な貫禄がある。
やや目尻の下がった、ひとの善さそうな顔つきだが、目付きは鋭かった。
唐桟縞の着物の袖口から出た腕が節くれだって太く、肩口の筋肉が盛りあがっていることからみて、剣術遣いだろう。
男は、賽子には関心がないくせに、ときおり端に座った越後縮の着流しの男に、ちらちらと鋭い視線を送る。
男が気にしているのは、賽子の目ではなく、男と同年代に見える、役者も顔負けの整った顔立ちをした、粋な侍のようだ。
中間頭の才蔵は、唐桟縞の男に、ちらりと目を向けるが、肩をすくめ寺銭の勘定に戻る。
男とは知らない仲ではないが、なにしろ、男が博打が目当てではなく、この賭博に通いつめてもう五日めなのだ。
賭場にいながら賭けをしないわけにもいかず、男は、すべての駒札を、興味なさそうに半に張った。
そのとき、着流しの男が、駒札を精算して、賭場から出ていった。
唐桟縞の着物の男も、あわてた様子で立ち上がる。
「五、二(ぐに)の半!」
賭場の男たちから、低いうめき声が漏れた。
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