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その日、不貞腐れた俺はユズルさんに食って掛かり‥
呆気なく、伏せられた。
「っ、くそッ‥」
「ははは‥ジョーは餓鬼だなぁ?」
ユズルさんが綺麗な瞳を細めて笑った‥
「…煩い」
カウンターの中、壁に凭れた俺はユズルさんが差し出したビールを煽り、頭を下げた。
敵わない…
ユズルさんは俺の中で完璧な大人だった。
直後…
大きな破壊音と悲鳴…叫び…唸り‥
目の前が濃い赤に染まった。
「マママ、マコさん‥っ!?」
カウンターの向こう、息を荒げたマコさんの手に‥底の割られたアルコールの瓶…その先端から、マコさんの手首までもが真っ赤に染まり、異様な匂いに包まれた…。
愕然とする俺を余所に、誰かが警察に連絡をし…
「‥早く、帰れ…もう、来んな‥よ」
ユズルさんが血塗れになった手で、俺を押し出し…
震えるマコさんに、歩み寄る事も…
憧れのユズルさんを助ける事も出来ないまま‥
その後、どうなったのかは知らないまま‥2度と店には行かなくなった。
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