2

4/5
前へ
/63ページ
次へ
その日、不貞腐れた俺はユズルさんに食って掛かり‥ 呆気なく、伏せられた。 「っ、くそッ‥」 「ははは‥ジョーは餓鬼だなぁ?」 ユズルさんが綺麗な瞳を細めて笑った‥ 「…煩い」 カウンターの中、壁に凭れた俺はユズルさんが差し出したビールを煽り、頭を下げた。 敵わない… ユズルさんは俺の中で完璧な大人だった。 直後… 大きな破壊音と悲鳴…叫び…唸り‥ 目の前が濃い赤に染まった。 「マママ、マコさん‥っ!?」 カウンターの向こう、息を荒げたマコさんの手に‥底の割られたアルコールの瓶…その先端から、マコさんの手首までもが真っ赤に染まり、異様な匂いに包まれた…。 愕然とする俺を余所に、誰かが警察に連絡をし… 「‥早く、帰れ…もう、来んな‥よ」 ユズルさんが血塗れになった手で、俺を押し出し… 震えるマコさんに、歩み寄る事も… 憧れのユズルさんを助ける事も出来ないまま‥ その後、どうなったのかは知らないまま‥2度と店には行かなくなった。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加