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案の定、店の入り口には沢山の花が飾られ‥
通路を狭めているなかを潜るように店に入った。
賑やかに歓喜する声を聞きながら、
ベージュの皮のソファーに身を沈める。
祝いのシャンパンやら、ケーキやらを差し出し大小の紙袋をプレゼントする客を眺めながら、差し出されたグラスに口をつけそれを眺めた。
退屈な時間。
何がそんなにも楽しいのか‥
「ジョーさん、退屈そうね‥」
ソファーに座ったママがボーイに飲み物を頼んで微笑んだ‥
「いや、楽しいですよ」
40代後半であろうママのきらびやかな指を眺め、笑顔を作る。
他愛ない会話や、素振りを観察しながら、全く違う事を考える‥
この後、何処に行こうかとか、
何をしようか‥誰と過ごすか‥
飾りだけの自分の存在に深く落ち込み、その方が楽だと掬い上げた‥
それでも、退屈は消えることなく襲い掛かり、バックから封筒を取りだし
ママに渡した。
「これでお祝いしてください」
中々の厚みの封筒を確認すれば、
目を細めたママがうやうやしく微笑み頷いた‥
「では、」
別れも言わず席を立つ。
出口付近、送り出してくれていたママに向かって礼をし、バックから手のひらサイズの箱を取りだし渡すように頼んだ‥
「素敵ね‥」
箱を開けて、確認したママが深く頭を下げたので踵を返し、店を出た。
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