零ノ思慕

5/7
前へ
/28ページ
次へ
直ぐに昇降口に辿り着く。 やや薄暗くなってきた外を見ながら立つ先輩に駆け寄り、 「先輩、遅くなってごめんなさい」 声をかける。 「いや、大丈夫だ……よ?」 僕の声に反応して振り向いた先輩が驚いた顔で硬直する。 「えっと……零くん、何で男子制服なの?」 と、聞いてきた先輩に。 「あ、その……」 急に“この先”に踏み込むのが怖くなり、目を反らしてしまう。 先輩が首をかしげる気配がして。 何かを言わなきゃ!と焦った僕は。 「えっと…えっと…あの、僕は男だし、普段女の子の格好してるから違和感あるかも知れないけど、大事な話だから……男子の格好に戻ったの。」 思わず、テンパって意味がわからない台詞を吐き出してしまう。 「んー…つまり、零くんは俺に大事な事を言うために男子の格好を……正装になってきた。って事だよね?慌てなくて大丈夫だから、ゆっくり話して?」 でも、言いたい事の要点を纏めつつ、然り気無く僕を慰めてくれた先輩に。 益々胸が高鳴って。 「じ、じゃあ……言います。」 そう告げて、軽く深呼吸。 そして。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加