大嫌い教師

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書き終えた忍はベッドを指差し 「寝ていい?」 と聞いた。 「あぁ、どうぞ。」 忍の書いた紙を見ながら河谷は素っ気なく言った。 忍はその隙に飛び切りの嫌味な顔をしてやった。 薄いカーテンを閉めベッドに横たると、パリパリとしたシーツの感触が肌に触れた。 「下の名前は忍っていうんだ。」 突然カーテンの向こう側から河谷が言った。 「うん。」 忍は少し考えてから聞いてみた。 「先生は私の名字知ってました?」 「知ってるよ。授業やってるんだから当然だ。」 そっか、そうだよね。 小さく心の中で呟いた。 生徒の名前覚えるぐらい当然なんだ。 何舞い上がってたんだろう。 「先生の下の名前は?」 「弘樹。」 「ふーん。平凡だね。」 「……。」 「忍は『耐え忍ぶ』の忍ぶなんだぁー。どうだ、かっこいーでしょ?」 「じゃあ生理痛ぐらい耐え忍べたんじゃない?」 なんて隙のない男だ。 「生理痛なんて嘘だもーん。あたし基本生理痛ないんだよね。」 「おまえなぁ」 「内緒にしてね。先生。」 「やだよ。俺は教師だ。」 しかしその時の河谷の声は普段の授業のときより、わずかに柔らかかった。
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