黒板とチョーク

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数学の授業がたまらなく好き。 すごく好き。 やばいぐらい好き。 黒板を書く後ろ姿も、チョークを持つ大きな手も、すべてが忍の気持ちを高陽させた。 「はい、ここまでが試験範囲。」 藤本の声を合図に、周囲が一斉に不満の声を漏らした。 忍は藤本のことをねちねち批判する隣の男子を凄まじい眼差しで睨んだ。 その男子は忍の視線に気付くと途端に化け物を見るような顔をして黙った。 「テストの日程が発表になったから、たぶん今日担任からプリント配られると思うけど、一応数学だけ俺から報告しときます。 えーっと数学は今回もまた世界史と並んで最終日。」 一斉に周囲からブーイングの声が上がる。 忍の隣の男子はまたしても騒いでいたが、忍の視線に気付き徐々にボリュームを落とした。 「最終日なんだから、数学捨てるなよ。ちゃんと対策するように。」 世界史担当は河谷。 河谷の作るテストはこれまたひねくれいて難しく、しかも今回は範囲が膨大だ。 二者択一。 もしそうせざるを得ないのならば、忍の答えは当然決まっている。
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