1600人が本棚に入れています
本棚に追加
それが忍には困ったような表情に見えた。
「教えてくれないんですか?」
「君は何が知りたいの?」
河谷はいたって冷静に立ち上がると、今度は世界史の資料集を整理し出した。
忍もそれにつられて立ち上がる。
「先生、転勤するの?」
少し声が震えていた。
ダンボールを蹴り飛ばしたかった。
「秘密。」
河谷はいつものようなからかう口調でそう言った。
やっぱりだ。
やっぱりあたしはただの生徒だ。
先生のお気に入りじゃなかったんだね。
あたし勘違いしてた。
毎日会っていたから先生の中で他の生徒より自分が大きな存在なんじゃないかって。
最初のコメントを投稿しよう!