恋する乙女

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「今を必死で生きてるの!恋愛、友達関係、あと部活も……」 「……待て。あんた部活やってないでしょ。」 「やってたもーん!中学のとき。」 こうしていつも二人の討論が始まるのだった。 「いっつも家で漫画読んで笑い転げてるのに忙しいなんておかしな話ね。」 「漫画は一種の教養を得る手段なの。」 「しかも肝心の勉強が抜けてるじゃない。学生の本分よ!」 「勉強してるよ!最近の数学の著しい成績の伸びをご覧になられましたか!?」 「確かに数学はよくなったけど、世界史があれじゃ意味ないでしょ!それにあんた文系。」 こないだの世界史のテストは悲惨だった。 数学と同日ですべての勉強時間を数学に費やしたら大変なことになった。 史上最低点、7点を記録してしまったのだ。 ぷっ ちょーウケるんですけど。 「何笑ってんのよ。」 「だって河谷の授業つまんないんだもん。」 「礼儀知らずな子ね。そんなんじゃ恋愛なんて無理よ。恋愛は相手とのコミュニケーションなんだから。」 「無理じゃないっ!」 「無理よ。そんなボサボサ頭じゃ。」 ――ボサボサ頭。 ボサ……ボサ…… ボサボサ……―― 忍は黙った。 と同時に動きも止まった。 勝ち誇ったような笑みを浮かべる母親は再びミシンに取り掛かる。 いじけ顔で突っ立っている忍を見て、 「学校遅刻するわよ。」 とだけ言いながら。 家を出る時、忍は母親がいないのを確認すると、鏡の前で髪の毛に寝癖スプレーを吹き掛けた。 「見てろよ。あのミシンオババめ。」
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