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つまり、これは下ヒ攻略への機を得たと言ってもいい。
とはいえ、兵の訓練をみっちりしておかねばならないし、兵練の次は地形を見て、ある程度の策略を考えねばならない。
「ううむ……」
二の足を踏んでいるような気分であった。
気持ちばかりが焦ってしまう。
いや、しかし物事は順序立ててやっていかなければならない。
司馬懿との敗戦でそれをこの曹仁は学んだはずだ。
もっとどっしりと、そして部下達の言葉に耳を傾けよ。
曹仁はそう言い聞かせながら、自らも戟を握って兵練に取り組んだ。
結果、数月の間に見違えるほどまで兵達は上達した。
生きるため、孫策を討つため、金のためと理由はばらばらであったが、いつしか兵の動きに機敏さ、統一感が備わっていた。
孟徳殿は汚名返上の機会を与えてくれた。
もしまた敗走するような事があれば、この曹仁とてただでは済まないだろう。
――しかし、戦いたい。
そして功をあげたい。
もうこれ以上敗戦の将の汚名は背負いたくない。
背負うならやはり曹家の御旗だ。
そして天下に轟く我等が覇道、それを完遂するのだ。
そのためならば我が命すら惜しくない。
決死の覚悟であった曹仁は議席に着いた。
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