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曹仁は満寵のほうへ、
「なにかあるか?」
と訊ねると、満寵は立ち上がって一礼し、策を述べた。
「大将、ここは奇兵の策を用いるべきです」
「奇兵の策だと?」
曹仁は気になる様子で目を細める。
満寵は言った。
「奇兵の策とは即ち、相手の不意を突き展開させる策略の事です」
「それはわかる。具体的にだ、どうするつもりだ」
満寵はどしどしと地図の方へ向かい指を指した。
指した先は丁度本陣営と小沛の城の真ん中辺りである。
「ここに塁を築くのです。二丈を超える遮蔽物となるような」
「それでどうするつもりだ」
「大将は少数の兵を連れ、そこで待機してください。付近の林中にも各所に兵を置き、時折立木を揺らしたりして敵の警戒を強めるのです」
「待機……」
「その間に楽進、史渙の二軍で下ヒに攻め込んで落とすのです」
「敵を油断させる策略か」
「小沛付近の斥候の量を増やす事と、塁をとにかく高く築く事。更に大将が陣中に居れば必ず孫堅軍は警戒します」
「なるほどな……」
曹仁は正直この満寵の策はあまり好きではなかった。
武人たるもの、このような怜悧狡猾な手を使うのは如何なものかと。
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