不撓の曹仁

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しかし、曹操からの命令では機略を用いて戦えとのこと。 ここは忠義とそして勝利のためである。 頷き、そして曹仁は決断した。 「よし、満寵の策を用いてここは下ヒを奪おう」 「なっ……」 これには楽進、史渙も動揺を隠せない。 「大将、あなたらしくない!武人の権化たる大将がどうして?!」 「楽進殿の言う通りです。ここは我らが武勇にて敵を蹴散らしてくれましょうぞ!」 口々に言うが、曹仁は首を横に振り、 「お前達、ここにいるのは新兵ばかりだという事を忘れたか?兵の士気はそなたらのおかげで上がってはいるがまだまだ。ふとしたきっかけで混乱にまで陥る。それが新兵だという事を忘れたか?」 「しかし、大将!」 「この曹仁は皆の命を預かっている。誇りなどのせいで兵を大量に死なせる事は大将として失格であろうが!」 「……」 二人は沈黙した。 「楽進、史渙、そなたらの気持ちもわかるが、一度下した命令は絶対だ。それでもこれ以上口答えするならば斬る!いいか?楽進、史渙は軍を率いて下ヒを落とせ!成功すれば孟徳殿に上奏して必ず多くの報酬を与えると約束する!そして、名誉を約束する!必ず落としてくるのだぞ!」 「はっ!」 かくして、曹仁はたった千の部隊を率いて塁を築き、五百程を林中に身を潜めさせた。 すぐさま小沛から大軍が現れた。 しかし、曹仁がこの時対峙していると思っていた文聘は敵大将ではなかった。 歩兵千人を率いる曹仁と対峙する敵陣。 そこには下ヒにいるはずの孫策隊、その旗印が認められるのであった。
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