暗中疑心

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孫策は軍を引き連れて小沛に移動をしていた。 曹仁ならばきっと小沛から攻め落とそうとするだろうとの読みからである。 半分当たりであったが、半分ははずれであった。 曹仁は囮である。 本命は下ヒに向かう楽進、史渙の奇襲部隊である。 曹仁が拠点とする彭城からは一番小沛が近い。 目的地である下ヒまではそこそこ距離があって、兵糧の消費も多いだろう。 加えて下ヒの防備はかなり硬く、城は堅固な城壁に囲まれている。 故に小沛を落として補給地点とし、下ヒまで攻め入った方が確実なのである。 孫策は武勇将で確実に攻め落としていく曹仁ならばこのように小沛から攻めると読んでいた。 どうやらこの時点で、智慧比べは曹仁が制したと言える。 しかしながら、厄介な事が起こった。 孫策は勇敢な将として知られる。 もしも、こちらの策略を看破されれば、こちらの兵力は二千。 向こうはおよそ十万の大軍であろうから、到底敵わないどころか、彭城の拠点を奪われる可能性もあるのである。 「斥候の数を増やせ。そして、向こうの斥候の動きにも注意を払え」 参軍の将である満寵はそう指示を送ったが、このような欺罔でいつまで騙しきれるか。
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