暗中疑心

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孫策の事だ、もしかしたら気付こうが気付きまいがどの道突進してくるかもしれない。 そこで曹仁は濮陽まで援軍の要請を送った。 そういえば濮陽の太守は新たな将軍が任じられたと聞くが、いったい誰が今は統べているのだろう。 曹仁はふと思ったが、今は戦中でそのような些細な事はいちいち考えるべきではない。 大望を志す者、或いは兵法に明るい者であれば、この援軍要請の重要さに気付く事だろう。 曹仁は満寵の献言に従い、自らも先陣にて塁を築き孫策を待ち構えた。 やがて孫策の大軍が迫ってきた。 孫策は騎兵隊を指揮していた。 足並み揃った軍馬、傍らには猛将文聘、陳武の姿も見える。 「……楽にはきっと勝てんだろうな」 孫策の政略に反発を覚える者も少なくないと聞くが、それでも反乱を起こさないのは一概にこの軍隊の威儀に脅えての事だろう。 孫策は先陣に立って、曹仁の陣営へ向け号んだ。 「我こそは江東の孫堅の長子孫伯符!聞け敵将曹仁よ!我が軍は精強、しかしそなたとて並みの兵を引き連れてないと聞く!お互い攻め合えば被害は甚大なものとなろう。江東の民は古来武を尊ぶ民族である!そこでどうだ、ここは武人同士、大将が前に出て一騎打ちで決着を着けないか!」
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