暗中疑心

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「面白い――!」 心からそう思った。 哨戒の色を表していた曹仁の顔は一転して喜色満面となった。 しかし、両陣営の将兵はひどく動揺した。 互いに武勇の者とはいえ、大将である。 もし討ち取られでもしたら、それでもう勝ち目はなくなってしまうのである。 「大将、ご自重ください!相手は孫策、あの太史慈、紀霊と互角に戦った猛将です」 満寵は諌めるも、曹仁は満寵の肩をぐっと掴んで、 「お前の大将を信じろ。この曹子考は今まで一騎討ちで一度として負けたことはない」 「しかし大将!」 そういうと、曹仁は満寵の耳に小声で言った。 「考えてもみろ。こちらは二千で向こうは十万も二十万いる。もし、一騎討ちを断りでもすれば、きっと突撃してくるだろうが」 「……」 言っている事は最もであるが、満寵は曹仁の顔が好戦的な心躍る顔をしていたのでどうも腑に落ちない。 とはいえ、満寵から反論することもなく、曹仁は嬉々として馬上より戟を持って孫策を迎え撃った。 向こうは向こうで諸将から引きとめられていたが、孫策は振り切るように曹仁のもとへ馬を走らせた。 孫策は興味津々という顔をして将剣を握っていた。 曹仁は曹操軍の名門、曹一族で最も好戦的で獰猛な男と聞いている。 その曹仁と手合せできるというのは武人としてこの上ないことであろう。
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