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孫策、曹仁は馬を走らせた。
互いに闘志を燃やし、その勢いのまま全力でぶつかった。
重厚な金属音。
火花散る闘牙の相剋。
大将同士の意地と意地とが勁烈なまでに打ち当たる。
二十合程は戦ったであろうか。
互いに得物、馬とをかえたりして夕暮れまで戦ったが決着はつかなかった。
その翌日もその次の日も一騎打ちは続いたが、結局互いに大きな一撃は与えきれず、勝負はつかなかった。
更にその翌日の事である。
曹仁はまたも先陣に立ったがその日、孫策は現れなかった。
曹仁は馬上より、
「どうした孫策!この曹仁を畏れて出てこれなくなったか?ははは!情けない奴め!!」
などと嘲り笑っていると、突如孫策の陣営から一閃の弓矢が曹仁の頬を掠った。
「なっ――?!」
頬から血が流れた。
曹仁はその弓術を前に血の気が失せた。
その矢はまるで流星のようにしなやかに伸びて、後ろで控えている兵を射殺したのだ。
矢の飛んできた方向を見ると、そこにいたのは猛将で知られる太史慈、字を子義であった。
なるほど、太史慈は弓の名手と聞いていたが、このように掠っただけで恐怖を覚えるような弓術の腕前だとは思わなかった。
「ならば一旦退く!」
曹仁は踵を返して本陣の方へ去っていった。
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