暗中疑心

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「孫策陣営には智に明るい将もおります。もし大将が逃げるとあれば、それらの者たちは必ず不信がって孫策の諌めるでしょう」 このように言ったため曹仁は、 「ならばよし」 と、逃げてさも策略を用いているように一芝居うった。 結果、孫策軍はこのありもしない伏兵を警戒して、しばらく攻撃はしてこなかった。 このような姑息な手段を嫌う曹仁ではあったが、やはりこの策のおかげで下ヒ陥落までの時間稼ぎにはなるだろう。 ただ、孫策軍は思いのほか小沛に孫策、太史慈、文聘といった主力を集めている。 おそらくこちらが二千程度の少数部隊と聞けば、瞬く間に制圧してしまうだろう。 濮陽から援軍はきてくれるだろうか。 命知らずと言われる事もある曹仁でも、流石に本陣を奪われ撤退する事態は避けたいところ。 特に彭城を死守しなければ、いくら楽進、史渙が下ヒを制圧したところで補給路を断たれて孤立してしまう。 そうなってしまえば本末転倒なのである。 しかし、その不安は的中した。 攻撃できずに切歯扼腕する孫策へ伝令が届いた。 「報告!下ヒが曹操軍によって攻撃され窮地との事!すぐに援軍をとの要請です」 「なんだと?!」
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