暗中疑心

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では、あの背後には何が起こっているのか? 下ヒを制圧した曹操軍からの援軍? ――いや、ありえない。 下ヒとの伝令はいまだ連絡が繋がっている。 にもかかわらず、そのような神速の行軍は到底不可能だ。 思惟する孫策へ伝令が急ぐ様子で跪いた。 「若君大変です。濮陽から来た曹操軍の援軍が我等尾軍の方で暴れまわっております」 「それは見ればわかる。数は?」 「一騎です」 「一騎?!」 報告を受けた孫策は信じられないという顔をしている。 「一騎?たった一騎で何ができるっていうんだ」 「仰る通りです。しかし、実際にまず一騎が先行して残り千騎ほどがそれに続いているようです」 「では千騎でいいじゃないか」 「それが若君……」 「なんだ?」 「その一騎は既にたったひとりで百人程は兵を斬り殺しております」 その言葉に孫策は眉を顰めた。 「ありえん、ありえんだろう?まだそう時間も経ってない筈だ……」 信じられないと言った顔を表す孫策。 いくら腕に覚えのある自分でも十万の大軍に一騎で襲う事などできない。 「将の名は?」 「名乗っておりませんが――」 「心当たりは?」 「この武勇、おそらくは……」
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