軍師の眼

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さて、事態は思わぬ援軍により集束した。 孫策は撤退し、下ヒからは陥落の飛報も届いた。 この戦果は一概に呂布の一際異彩を放ったその武勇と言えよう。 「呂将軍、そなたの援軍、まことに感謝している。馬中の赤兎、人中の呂布。まさに噂に違わぬものであった」 そういうと、呂布は哄笑して言った。 「なんの、先の会議では匹夫の勇などで天下が安んじられるものかと言った不届き者がおりましてな」 「ほう……」 「その者にこの呂布がどれほど実力があるのか見せつけてやりたかったのです!」 そういうと、曹仁も腹を抱えて大笑した。 「はっはっは!なるほど。ではその者も今後は呂将軍に大口は叩けますまい」 「ふふん、いかにも」 「しかし、文官というのは所詮戦に出ない者達ばかり。戦場に出てどれほど呂将軍が優れた者かわかってはおらぬのです」 「その点、大将は武人の考えを大いに理解してらっしゃる。それどころかたった二千の新兵で孫策十万の兵を相手し、守りきったのです。並の将ではできない」 「それを言うならば呂将軍も。これほどの武勇を見せた将は古今にも例がありません!」 「はっはっは!今日の勝利は歴史に語り継がれることでしょう!」 「さあ呂布殿、今日は飲もう!今日はあなたの武勇譚が聞きたくなった」 「おお!ならば、お付き合いいたします!」 「あと、あなた方の陣中にも一人一杯だが酒を送っておきましょう」 「これはありがたい!奴らもきっと喜ぶでしょう!」 曹仁と呂布はその晩本営にて酒を酌んだ。
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