軍師の眼

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曹操軍の大勝。 曹仁、呂布の二軍は下ヒを奪った。 その報はすぐさま許都の曹操の耳にも入った。 いまだ都より事態を見つめる曹操は政務に忙しかった。 献帝を擁して専権を振るう曹操であったが、その天下の半分以上は孫堅が支配しており、かつてのように自由がきかなかった。 また、自身の統べるやり方に反発する者、或いは叛意を抱く者も当然おり、悩みの種は内外にあるようであった。 その悩みの種共は留守にすればするほど献帝に取り入ろうとして、こそこそとなにか企みを談議している。 今すぐにでも曹操はそれらを一掃したいところであったが、しかし今はまだそのような者を粛正する時機ではない。 今最も優先的にやることは、劉備との友好関係を維持しつつ、破竹の勢いの孫堅、孫策父子を抑え込むことである。 そのため、曹仁からの吉報には心の底より喜びが湧いた。 「――しかし我が君、これは最初の一手です。まだまだ先は長い」 そう言ったのは、曹操の股肱の臣の一人で陸遜、字を伯言である。 曹操は人払いをした後に陸遜を寄せ、こう訊ねた。 「曹仁はたった千人の歩兵から兵を集めて下ヒをとった。このまま下ヒと彭城の陣営で小沛を奪うべきだろうか」 陸遜は言った。
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