3895人が本棚に入れています
本棚に追加
「それはわかっている。そのためにわざわざ夏候惇を守備につけたのだ」
「しかし、それでもまだ安心はできません」
「ほう……」
曹操の鳳眼が細くなる。
「孫策は今回、下ヒを奪われた事で我が君の見る目を変えてくる筈です。きっと大軍を用いて、或いは策略を用いて一気に許都へと殺到する算段を立てていることでしょう」
「その大きな一手が夏候惇のいる汝南か」
陸遜は頷く。
「おそらく寿春の部隊はその準備に取り掛かっている事でしょう。我が君、次に多くの血が流れるのは小沛でなく汝南です。小沛攻略については下ヒの治安維持の後にすすめるべきでしょう。幸い孫策は負傷しておりますので行動が遅れていることと思われます」
「ううむ……」
唸る曹操は深慮し、やがて口を開いた。
「ならば陸遜に命じる。急ぎ汝南に向かい、夏候惇を補佐せよ」
「はっ!」
このように命は下ったので、陸遜は急ぎ支度をして夏候惇のいる汝南へと向かった。
数日後、陸遜が向かうとそこへ一報を聞きつけて武将の路招が出迎えた。
「これは軍師殿、よくぞ来られました」
陸遜は路招の礼に応えた。
「路招殿、わざわざ出迎えていただけるなんて……」
「夏候将軍に言われてますので、ささっどうぞこちらへ」
路招は足早に城郭の中へ案内し、汝南の門は閉ざされた。
最初のコメントを投稿しよう!