第一章

3/41
前へ
/76ページ
次へ
彼女との出会いは一年前の秋の文化祭に遡る。 この年の僕のクラスはお化け屋敷をすることになったのだが、あまりの退屈さにコッソリ抜け出すことにした。 誰にも見つからないような場所で引きこもっていようと考えた僕は、離れにある美術室に入った。 そこには美術部の生徒たちが描いた絵が展示してあり、何気無く目をやっていると一枚の絵に目が止まった。 真っ黒なキャンパスに色々な色と様々な太さの線がグチャグチャに入れ混じった絵だった。 よく分からない、子供の落書きのような絵。 目線を下げると、その絵のタイトルが目に入った。 “生命の誕生 ” 予想だにしないそのタイトルに、軽い衝撃を受けたことをよく覚えている。 描いた人物の名前を見ると綺麗な文字で“宮野美鈴”と書かれていた。 それにもまたショックを受けた。 宮野美鈴といったら、学年一の秀才だ。 全国模試では常に10番以内をキープしていると噂で耳にしたこともある。 そんな彼女が、この絵を...? これまで僕の中で彼女は「絵に描いたようなつまらないガリ勉女」というイメージしかなかったが、この瞬間から、彼女に対して強い興味を抱くようになった。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加