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絵が苦手で何が悪い。
描けなくたって生きるのに不自由するわけじゃないし。
別に悔しくなんてないし。
負け惜しみでもないし。
あんな一言でこんなネチネチと根に持つなんて小さい男だって?
知ってるさ、ほっといてくれ。
「あ、そうだ。」
握り拳にした右手を、仰向けにした左手の上にポンと乗せ、ベタに閃いたポーズをとるユウリ。
「美術部に入っても、絵を描かなくていい方法があったわ。
絵のモデルになればいいのよ。」
モデル、だと?
「無理無理!
そんなのやったことないし、長時間同じポーズとり続けるなんてダルマさんが転んだが得意な奴にしか無理だって!」
そんな僕は大の苦手です。
「大袈裟ねー。大丈夫よ!
何も長時間息止めなきゃいけないわけじゃないんだから。
イヌにだって出来るわよ?」
イヌに出来て人間の貴方には出来ないの?
というユウリの心の声が聞こえてきた。
だから、いい加減イヌに例えたりするの止めてくれってば!
「ちょうど部長さんがモデル探してるって言ってたし、ナイスタイミングじゃない。
良かったわね、描きがいのある美少年に生まれてきて。
ご両親に感謝しないと。」
大きなお世話だ。
それに僕はまだやるなんて言ってない。
「まさかとは思うけど、やらないなんて言わないわよね?
美鈴との恋を実らせたければ、私の言うことは絶対よ?
拒否権なんて貴方にはないんだからね?
わかってる?」
空気が、空気が黒く濁ってきた。
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