第一章

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教室のドアに手を掛けると、中から女子生徒の声が聞こえてきた。 それはだんだんと大きくなり、聞き覚えのある声だと思ったと同時にガラッと扉が開き、誰かが飛び出してきた。 「わっ!ビックリした!」 ギリギリで衝突するのを避けた。 どうやら僕の運動神経は、まだまだ鈍ってなさそうだ。 「あれ?君は、二年の飯島くんじゃない。 何か雰囲気変わったね! 一瞬誰かと思っちゃった。 どうしたの?美術部になにか用事?」 教室から勢い良く飛び出してきたのは、美術部の部長さんだった。 相変わらず人の良さそうな、ニコニコした笑顔を浮かべている。 「あの、俺...」 「ん?なあに?」 急速に動きを速めた心臓を落ち着かせ、手に握りしめた入部届けを部長さんの目の前へ突き出した。 「二年B組、飯島恭也。 美術部に入部希望です。 よろしくお願いします。」
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