第二章

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部長の後ろ姿を見ながら、昨日の出来事をボンヤリと思い返す。 地味子ちゃんに好かれたいが為に実行したイメチェンが、何故か空回り。 変な黒魔術師(本人は占い師と言い張っていたが)ユウリとの出会い。 美術部への入部。 本当に濃い一日だったなぁ。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 昨日から所属することになった美術部で、僕は篠原部長のモデルをすることに決まった。 どうやら部長が探していたイメージとピッタリだったようで、とても喜ばれた。 入部の際モデル希望だと伝えると、 “一応君がどんなタッチで描くのか見たい” と言われ、画用紙に水彩絵の具で風景画を描かされた。 完成した子どもの落書きを、我ながら酷いもんだと眺めていると、それを見た荒木先生は 「実に独特な世界観を持っていて面白い。」 と評価してくれた。 すると部長も、 「同じ景色でも、人によって見え方や感じ方は違うの。 飯島くんの目には、こんな風に映っているんだね。」 と優しい口調で語り掛けるように話してくれた。 生まれて初めてもらった褒め言葉に有頂天となった僕は、その絵を携帯の写真に収め、友人に送り付けた。 すると数分後、 「お前に三歳の弟なんていたの?」 なんてふざけた返信が来たため、すっかりやる気スイッチはOFFされてしまった。 でも、二人のおかけで大嫌いだった美術が少しだけ好きになれたのは大きな変化だと思う。 というわけで僕は、地味子ちゃんが荒木先生のモデルをするように、篠原部長のモデルとなったのだった。
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