第二章

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○ ○ ○ ○ ○ 「夏のアートグランプリには間に合いそう?」 強い日差しの中、昨日の出来事を脳内再生していると荒木先生と篠原部長の話し声が聞こえてきた。 「そうですね! 飯島くんさえチョロチョロと動かなければスムーズに進むかと思います!」 部室の真下から上を見上げ、荒木先生へ僕に対する非難を口にする部長に、ウッと声を喉に詰まらせる。 だから言ったんだ。 ダルマさんが転んだは苦手だと。 「まあまあ。 飯島はまだ初心者なんだし、慣れてないのは当然なんだ。 最初からあまりハードな指導は無しだぞ。 」 「そうですよ部長。 それに俺、夏の日差しが本当にダメなんです。 部屋の中だったら絶対動かない自信ありますから、そっちに移動しましょう。」 荒木先生の意見に乗っかって部長へ抗議する。 「ダメよー! だって今回の私のテーマは浮遊感なんだから!」 「浮遊感?」 「そう! 飯島くんって本当にキレイで、神秘的な美しさを持ってるじゃない? この暑苦しい太陽の日差しが面白いくらい似合わないのよね。 うーんと、例えるならば飯島くんは夜の世界... 月の住人って感じ! そこで、真夏の景色に浮かぶ、飯島くんの “何で彼はここに存在しているんだろう” っていう違和感が描きたいの!」 「...はぁ、そうですか。」 芸術家の言うことはよく分からない。
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