21人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
左右に結わえたおさげを紐解き、ふわふわの髪を肩に降ろす。
しゅるしゅると襟元で結んだリボンを緩めた後、ブラウスのボタンを二番目まで外した。
人気のない校内の女子トイレ。
洗面台に下腹部を押し付けて、バランスを取りながら背伸びする。
少し高めに設置された鏡に映し出される自分の姿を確認しながらの最終チェック。
開いた襟ぐりを、ぐいっと大きくはだけさせると、迫力のJカップバストの谷間が見てくれとばかりに主張してきて……。
――準備は完璧!!
仕上げに艶々のグロスをたっぷりとリップに馴染ませて、意気揚々と廊下に出た。
時刻は午前7時半。
部活動をしていない、帰宅部生が登校するにはまだまだ早すぎる時間帯。
廊下にも、横目に過ぎていく教室にも、人ひとりいない。
けど……。
クラスメイトの彼だけは。
今朝も必ず教室に到着しているんだ。
開いたままの引き戸から、室内を覗き見る。
窓際後ろから三番目。
窓ガラスから射し込む穏やかな日の光をさらさらの黒髪に浴びて、頬杖をつきながら読書を楽しむ彼。
品のいいダークブラウンの眼鏡フレームから垣間見える涼しげな目許に、思わず見とれる。
最初のコメントを投稿しよう!