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5分間ほど、すっかり目的を忘れて扉の影から彼を盗み見た後、はっと我に返る。
っ、いけない!
早くしないと人が来ちゃう!!
気持ちを落ち着けようと、ひとつ深呼吸して、すっと姿勢を正すと一歩また一歩と室内に足を踏み入れていく。
なるべく色っぽく、艶やかに。
くねくねと腰をしならせ、ゆさゆさとバストを上下させながら、彼との距離を縮めていく。
彼の目の前、机の正面に立ちはだかった瞬間。
活字の書面から緩やかに顔を上げた彼の瞳が、私の姿を捉えた。
目が合って、一際大きく跳ね上がる心臓に、息を呑む。
その動揺を悟られないように、目許を細めて妖美な笑みを浮かべてみせて……
ここからが本番!!
バンっと両手を恐れ多くも彼のデスク上に突き立てて。
前のめりになって、大きく開いた襟ぐりから主張し続ける豊満な胸の谷間を、これでもか!ってくらいに見せつけた後。
17年の人生史上、一世一代とも言える台詞を言い放った。
「むむむ、宗夫(むねお)くん!!
あた、あた……っ、あたしとっ……つきあってくだひゃい!!」
……っ、うわぁっ!!
遂に言ってしまったという高揚感と、思いっきり噛み倒してしまった羞恥心から、色んな意味で顔が真っ赤になる。
そんなあたしを至極冷静に眼鏡のレンズ越しから観察した後、特に考える様子もないまま彼の唇が上下に動いて……きっぱりと返答をくれた。
「悪いけど。俺……
貧乳が好きだから。」
「………………。」
「…………。」
「……。」
……。
んなっ、
なんですとーーーーっ!?
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